「みんなから偏見の目で見られては、母さんを傷つけるようなことにするのだけは絶対にイヤなんだ」
その熱心な思いとお母さん思いの楓くん。
それと同時に、切なげに話す楓くんを見ては、その中にある隠されてるものを感じた。
【もしかして、楓くん。嫌な過去があったりする?】
今日、凛ちゃんが話してくれたこと。
耳が聞こえないおばさんのことを一部の人たちからは受け入れてもらえないってこと。
恐る恐る訊ねてみると、「どちらかと言えばあるに等しいかな」と伏目がちに楓くんは答えた。
……やっぱり、楓くんにもあったんだ。
そう思ったのと同時に、楓くんは辛い過去を話してくれた。
「小学生の頃、手話をしながら母さんと歩いてたらクラスメイトと遭遇したんだ。そしたら、次の日、学校でみんなから変な目で見られるようになった。『あいつの母親、耳が聞こえないらしいぜ!』ってクラス全員に知れ渡ってしまって、みんな俺を避けるようになったんだ」
私も似たような経験をしたことがあるから、すぐに想像することができた。
私の場合、声を出すことができないのに、周りからは“わざと話さない”と勝手に決めつけられて、知らない人たちからも“無口な子”だと認識されて、みんなからスルーされたことがある。
いじめは何度も遭ってきたが、小学生の時が1番残酷だったかもしれない。
言いたいことはストレートに言ってしまうし、他の人も加わってはいじめがエスカレートしてしまう。