外に出ると、太陽がいつの間にか沈み始めていて、オレンジ色の夕焼けに包まれていた。
【重たいでしょ? 私、持つよ】
スマホのメモアプリに文字を打ち込んで隣を歩く楓くんに見せる。
「いや、いいよ。小春の家まで15分くらいだし、ここは男である俺に任せとけって」
いつになく頼もしい楓くんに思わず惚れそうになる。
『ありがとう!』
笑顔で楓くんに手話で伝えると、彼もまたまんざらでもない表情を浮かべていた。
「この中に入ってるのは、新じゃがいもに春キャベツ。どれも料理に使いやすいものだから、ぜひ食べて」
【今度、食べてみるよ】
予想もしなかったお裾分けに、きっとお母さんも喜んでくれるだろう。
それから、しばらく歩いてあと5分くらいで着く頃だった。
「あのさ、小春」
ふと真剣な表情で私を見る楓くん。
「母さんが耳が聞こえないこと、他の奴らには内緒にしてて欲しいんだ」
楓くんからのそんな願いに、私は不思議に思って首を傾けた。
【唯花ちゃんにも?】
「……うん。有野を信頼してないわけじゃない。手話を覚えようと小春と一緒に頑張ってるし、いい奴だって分かってる。いつか伝えたいとも思ってる。でも……」
でも……?