「俺が持てって? まぁ、小春に重たいもの持たせられないしな」
楓くんの優しさに胸がじーんと熱くなる。
すると、おばさんが楓くんに手話で話しかけていた。
『言われなくてもそのつもりだよ』
2人の会話がいまいち分からず首を傾げていると、そんな私を見兼ねた凛ちゃんがこっそりと教えてくれた。
「小春姉ちゃん、兄ちゃんが家まで送ってくれるって」
思ってもしなかった言葉に瞬きを繰り返して楓くんを見てみると、彼は玄関の扉を開けて私を振り返っていた。
「ほら、行くよ」
どうやら送る気満々らしい。
「小春姉ちゃん、ばいばーい!」
明るい笑顔で手を振ってくれる凛ちゃんとおばさんに深くお辞儀して家を後にした。