リビングに顔を出してきたのは、赤いランドセルを背負った元気いっぱいな女の子。
思わず視線が重なってしまった。
「その人、だ〜れ? 兄ちゃんの彼女?」
「ちげーよ! 友達」
「へぇ〜、兄ちゃんってこういう感じの人がタイプなんだね!」
「だから、違うって言ってんだろ」
困惑する私に気付いたのか、楓くんはその子を紹介してくれた。
「あっ、俺の妹、小6の凛(りん)」
凛ちゃん。
可愛らしい名前。
「そんで、友達の星乃小春」
今度は、凛ちゃんに私を紹介してくれる楓くん。
「小春姉ちゃんね! 初めまして!」
挨拶してくれる凛ちゃんに“よろしくね”と言いたい。
「……っ」
なのに声がでなくて、代わりにペコリと会釈をした。
「……?」
首を傾げる凛ちゃんに、すかさず楓くんがフォローしてくれた。
「小春は、いろいろと事情があって話すことが難しいんだ」
話せない私を凛ちゃんは、どう思うのだろう?
返ってくる言葉に、びくびくしながら待っていると……。
「へぇ〜、そうなんだ!」
凛ちゃんの反応は、意外にもあっさりしていた。