楓くんに連れられ保健室へと向かった。

話せない私に代わって、楓くんが養護教諭に事情を説明してくれた。

ソファに座って、氷水が入っている袋をタオルで包んで赤くなっている頬を冷やす。

「小春、痛かっただろう?」

楓くんは私の隣に座って背中を摩ってくれる。

氷水の冷たさと楓くんの優しさもあってか、痛みが徐々に和らいでいく。

まもなくして、授業終了のチャイムが鳴った。

それから、数分もしないうちに、突然ガラッと勢いよくドアが開いて思わずビクッと体が反応する。

「星乃さん、ごめん‼︎」

私を前に深く頭を下げた彼女は、セミロングでゆるふわパーマの有野(ありの)唯花(ゆいか)さん。

さっき同じチームだった子だ。

彼女の様子からして、私にボールをパスした子は有野さんなのだろう。

「まだ痛むよね? ほんとごめんね……」

心配する有野さんに、“もう大丈夫だよ”と言いたい。

「……っ……」

なのに、どんなに頑張ってみようとしても声がでなかった。

代わりに、楓くんが口を開いた。

「ったく、有野、気を付けてよな」

「だから、ほんとごめんってば。わざとじゃないの……」

「それは分かってる」

私も分かっている。

わざと当てたことではないくらい。

ボールを受け取れなかった私の不注意でもあるから、そんなに謝らなくていいんだよ。

それにね、私にパスを回してくれたこと、本当は嬉しかったんだ。