パスの練習が終わり、男子と女子と分かれて、それぞれ練習試合を行う流れになった。
試合が始まった途端、みんな一斉に動き回ってパスを繋げていく。
キュッと床に靴が擦れる音、ドリブルでボールが跳ね返る音が体育館に大きく反響する。
みんな頑張っているけれど、コート内から1歩も動けずにいる私がある意味目立っているに気がいない。
そんな私に同じチームの人たちもボールを渡さないのも当然だと言えるだろう。
さっきは楓くんにパスできたけど、私にとって試合はまだまだハードルが高すぎる。
もう、得点なんてどうでもいい。
ただ1秒でも早くこの試合が終わって欲しい。
そう思っていると、突如、聞こえてきた掛け声。
「星乃さん、パス受け取って!」
えっ⁉︎
俯いていた顔を上げると、同じチームの誰かが投げたボールが私の方向へと飛んできていた。
手を伸ばすことが出来ず、みるみるうちにボールが近づいて……。
「……っ!」
受け取ることができずに顔面に直撃してしまった。
頬に鋭い痛みが走り、思わずその場にしゃがみ込んでしまう。
「小春!」
周りが騒然とする中、隣のコートで試合していたのにも関わらず楓くんが私の異変に気付き駆けつけてくれた。
「大丈夫か?」
「……っ」
頬がズキズキと痛む。
見えないけれど、赤くなっているかもしれない。
「とりあえず、保健室行こう」
楓くんに体を支えてもらいながら、なんとか立ち上がるとその場を後にした。