「家では普通に話すんだろう? だったら、学校でも話してみたらどうだ?」
……簡単そうに言わないでよ。
そんなことできてたら、とっくに学校でも話せてる。
「もう高2なんだぞ。来年には受験が控えてる。進学するにしても、働くにしても、話さないだけではもう済まされない」
「……っ」
下を向いて、ぐっと我慢するように唇を噛み締める。
この前、楓くんは『嫌なことがあったら連絡してほしい。そしたら、すぐに駆けつける』と言ってくれた。
楓くんに連絡したいけど、バイトに向かっている楓くんを私のせいで戻って来させる羽目になってしまうし、先生が怒っている前でスマホをいじくるなんてもってのほかだ。
今は、先生の気が済むまでじっと耐えるしか方法がない。
今もなお、私の気持ちなんてお構いなしに先生は言葉を続ける。
「生きていくうえで、人とのコミュニケーションはとっても大事なことなんだ。星乃はそれを分かっているのか?」
言われなくても分かってる。
他の誰よりも。
頷きや首振りだけでの意思表示はあまり会話が成り立たないことも。
ちゃんと声にしないと自分の思いが相手に伝わらないこと身を持って実感してる。
それからも先生からのお説教は止まらず、終わった頃にはもう教室には誰も残っていなかった。