「そういえばさ、連絡先交換しない?」
パンを食べ終えた頃、葉山くんは言った。
えっ……⁉︎
彼の言葉にびっくりして葉山くんを見ると、まっすぐ私を見つめる瞳と合った。
「また今日みたいに、嫌なことあったら連絡してほしい。そしたら、すぐに駆けつけられるし、それに星乃がどんなこと思っているか知れる気がするんだ」
葉山くんは、とても優しくて、とても不思議な人。
こんな私にも色眼鏡を使わない。
みんなを敵にしてまで、私の隣にいてくれる。
そして、心の中にいる本当の私を知ろうとしてくれる。
それが、どんなに嬉しいことだろう。
いじめられて憂鬱だった感情がすうっと消えていく。
私は、制服のポケットからスマホを取り出すと、葉山くんと連絡先を交換した。
クラスの子と連絡先を交換するのは初めてのことで、今もなお信じられずにスマホの画面をまじまじと見つめる。
……あっ、そうだ!
これなら、声をだせなくても言葉を伝えられる。
葉山くんに、どうしてもお礼が言いたい。
まっさらなトーク画面を開いて文字を打った。
【葉山くん、さっきは助けてくれてありがとう。それに、クリームパンも。明日、お金渡すね】
恐る恐るメッセージを送ると、すぐに、隣にいる葉山くんのスマホからピコンと通知の音が鳴った。
葉山くんはメッセージを読むなり、私を見て言った。
「別にお金なんていいよ。俺、バイトしてるし。今回はタダってことで」
なんて、葉山くんはこんなにも器が大きいのだろう。
もう1度、メッセージで彼にお礼を伝えた。