いつの間にか時間が経って6時間目になったけれど、その場から動くことはできなかった。
時間割には6時間目は体育だけど、私にはどれも苦痛な時間でしかない。
緘動のあまりスポーツなんてできやしない私。
もし、場面緘黙症になっていなければ……。
緘動になっていなければ……。
そう思ったことは数えきれない。
みんなと同じように話すことができたのならば……。
体をスムーズに動かすことができたのならば……。
学校生活はとても楽しいものになっていたかもしれないのに。
友達と仲良くお喋りしたり、彼氏を作っては幸せな時間を過ごしたり、青春を謳歌している周りとさほど変わらないぐらい、日々を満喫できたかもしれないのに。
一言も声を出すことができないせいで、私の人生はめちゃくちゃだ。
帰りのホームルームが始まる前に、ひっそりと教室に戻った。
また、あの2人組が私をちらちら見ながらひそひそと話していたけれど、今の私の心は無に近い状態だった。
先生の話なんて耳に入らず、窓に映る景色ばかり見ていると、いつの間にかホームルームが終わって、放課後になった。
「星乃、また明日な」
なんで……?
私、葉山くんに酷いことしたのに。
手を振り払ってしまったのに。
まるで何事もなかったかのように、葉山くんは私に軽く手を振って教室を出て行った。
私は、その姿をぼんやりと見つめた。