あれから、月日が経ち、私は3年生になって高校最後の年を迎えた。

受験生とあって、勉強に励む毎日。

「じゃあ、小春。またあとでな」

朝、教室の前で楓くんとは別れた。

一緒のクラスが良かったけれど、唯花ちゃんともバラバラになってしまったのだ。

仲良い友達がおらず私1人でやっていけるか不安だった。

でも、その不安な気持ちは日を重ねることに徐々に減っていって、3ヶ月経った今ではこのクラスに馴染めつつある。

なぜなら……。

「あっ、小春ちゃんおはよう!」

目の前のドアを開けると、私が来たことに気付いた子が駆けつけてくれた。

みんなは何気ない日常だと思うかもしれない。

だけど、私にとってはそれだけでも嬉しくて必死に声を絞り出す。

「……お……おはよう、日和(ひより)ちゃん」

勇気出して挨拶を返すと、日和ちゃんは優しい笑顔を向けてくれた。

七瀬(ななせ)日和ちゃん。

今年になって、新しくできた友達だ。

まだ少し喉のつっかえはあるが、学校でも話せるようになった。

場面緘黙症も緘動も少しずつ症状が和らいでいる気がする。

席に着いて、日和ちゃんとお喋りするのが楽しくて毎回時間を忘れてしまうほどだ。