『そういえばさ、なんで有野はあんなにテンション高かったんだ?』

電話をかけてくる時点で、そう聞かれることはなんとなく分かっていた。

「それはね、今日、唯花ちゃんと話せたからだよ」

『そうなんだ……って、話せたってほんと⁉︎」

とても驚く楓くん。

「ほんとだよ」

『よく頑張ったな、小春』

「ありがとう」

みんなにとっては何気ないことなのに、1つ成長できた私を楓くんは褒めてくれた。

ますます嬉しくなって、もっと頑張ろうと勇気が湧いてくる。

唯花ちゃんともっと話せるようになって、楓くんとももっと言葉を交わして、話しやすい人や安心して話せる場所を徐々に増やして、いつかは……。

気持ちが高ぶる私とは打って変わって、楓くんは静かになった。

もしかして電波が悪くて電話が切れたのではないかと思い、スマホの画面を見るとまだ彼と繋がっていて、その証拠に1秒ずつ増えていく通話時間が表示されていた。

もう1度、スマホを耳に当てる。

「楓くん……?」

心配になって尋ねると、楓くんはなんだかしんみりとした様子だった。

『あっ、悪い。小春にとって凄く良いことなのに、今、俺さ、バカなことを考えてしまったんだよ』

「えっ?」

次の瞬間、楓くんの言葉とともに、光の尾を引いて空を流れていく星を見つけた。

『家族以外で小春の声を聞けるのは俺だけでいい……なんて』

光っている間に願い事を言うことができたらその願いは叶うと言われている流れ星。

なのに、楓くんは『ごめん、今の聞かなかったことにして』とその願いを打ち消してしまった。