「いらっしゃいま……ってまたお前らか」

喫茶店に入るなり、楓くんは私たちに気付いた。

「やっほー! 葉山くん!」

「やっほーって、さっき学校でも会っただろ」

「えぇ〜そうだっけ?」

「30分前のことを忘れたのか?」

「別にいいじゃん!」

「てか、なんかテンション高くない?」

「え〜? そんなことないよ」

唯花ちゃんはそう言うが、ハイテンションなのは丸分かりだった。

それはきっと、私が唯花ちゃんと話せることができたからだろう。

「小春ちゃん、なに頼む?」

空いている席に着き、メニュー表を広げる。

「失礼いたします」

楓くんは丸いトレイを持ってきて、それぞれにお冷とおしぼりを置く。

「ねぇねぇ、葉山くん。新しい季節限定のデザートとかでてる?」

「それならモンブランタルトがあるよ。確か、メニュー表の最後のページ……」

「めっちゃ美味しそう! 私、これにしようかな」

デザートのページ欄に釘付けになっている唯花ちゃんをよそに楓くんは私を見るなり、唯花ちゃんに気付かれないように小さな声で囁いた。

「なぁ、小春。今日バイト終わったら電話してもいい?」

楓くんの誘いに嬉しくなってコクリと頷いた。