「ほんと、夏休みってあっという間だったよね!」
帰り道をゆっくり歩きながら、唯花ちゃんは話を振ってくれる。
「いろいろ食べ過ぎて体重2キロも増えちゃったよ。今日からダイエットしなきゃ」
そう言いながら、唯花ちゃんはお腹を気にするようにポンポンと叩いた。
私から見れば痩せて見えるのに、本人からするとどうやら気に食わないらしい。
「ところで、小春ちゃんは葉山くんとどこか行ったりした?」
唯花ちゃんの問いに、首を横に振る。
「えっ、どこにも行ってないの? まぁ、葉山くんバイト忙しいみたいだし、今日もシフト入ってるから先帰るって言ってたし……でも、小春ちゃん寂しくなかったの?」
今度はコクリと頷く。
「えっ、どうして?」
いつもなら唯花ちゃんに手話で答えるのに、今日は違う。
「……っ……」
楓くんに話せるようになってから、唯花ちゃんにも話したいという気持ちが強くて、頑張って声を絞り出す。