「いいに、いいに決まってるよ!」
手を握りしめて、気付いたら大声を出していた。
静寂な町に私の声が響き渡る。
恐る恐る楓くんを見ると、彼は驚きのあまり目を見開いて、一瞬、時が止まったかのように固まっていたが、みるみるうちに頬が緩んで吹き出してしまった。
「ふっ、ふははっ!」
「なんで笑うの?」
恥ずかしさのあまり、口を尖らせる。
「だって、必死になってる小春みたら可愛く思えてしまってつい」
か、可愛い……⁉︎
予想もしなかった言葉に、今度は私が目を見開く。
楓くんが一歩私に近づくと、次の瞬間、温かい彼の手が頭にのった。
「ありがとな、小春」
優しく頭をポンポンとしてくれて、みるみうちに顔が熱くなってしまう。
……ずるい。
ただただずるいとしかいいようがない。
こういうこと平気でしてくるから、必死に抑えようとしていた気持ちが一気に溢れてしまった。
それに、さっきから胸が高まっていくばかり。
「やっぱり、小春と見たほうが星空はとっても綺麗だな」
そう言って、楓くんは止めていた足を再び動かした。
また1歩、また1歩と……。
「……私もだよ」
まだその場に留まっている私は、楓くんの後ろ姿を見ながらぽつりと言葉を漏らした。
「なんか言ったか?」
振り向いて私を見る楓くん。
どうやら彼の耳に届いていなかったらしい。
でも、聞こえてなくて良かったとも思う。
「ううん! なんにも!」
笑顔を浮かべて、楓くんの元へ駆け寄った。
楓くんの隣は心地良くて、とても落ち着く。