外は真っ暗で、黄色のまん丸い月が辺りを淡く照らしていた。
楓くんがバイト先から帰ってくるであろう道を歩いていると……。
少し先に、こちらに向かってくる人影。
「あっ、小春!」
彼は、私を見つけるなり、嬉しそうに駆けつけてくれた。
「楓くん」
久しぶりに彼に会うけど、声はしっかりと出た。
「ごめんな、急に呼び出したりして」
「ううん。ところでどうしたの?」
「とくに用はないんだけどさ、なんとなく小春と一緒に星空を見たかった」
……星空。
楓くんの背景には、綺麗な星たちが空に浮かんでいるのが見えた。
「それに、最近、小春に全然会えてなかったから」
その言葉にギクっとなる。
多分、楓くんは薄々気付いていると思う。
私が楓くんと距離を取ろうとしていたことに。
こんなに誘いを断ってたんだから。
「でも、夏休み最後の日に小春に会えて良かった」
理由を聞かずに、こんな優しい言葉を言ってくれるのは世界でたった1人しかいない。
葉山楓くん。
私、久しぶりに君に会って、私の名前を呼んでくれて、それだけでどうしようもないくらい嬉しくなってる。
「なぁ、少し歩かない?」
楓くんの問いに、私はコクリと頷いた。