そして、ひと通り話し終えると、今度は私の話題になった。

「ところで、小春ちゃんは好きな人とかいるの?」

唯花ちゃんのその言葉に、思わずケーキを食べる手が止まった。

好きな人といって、真っ先に頭に浮かんだのは楓くん。

本当は、自分でも気付いてる。

楓くんを見るたび、胸がドキドキとする理由。

それが恋だということに。

なのに、唯花ちゃんに“いないよ”と小さく横に首を振った。

「えっ! いつも葉山くんと一緒にいるし、2人いい感じじゃないの?」

驚く唯花ちゃんに、手に持っていたフォークを皿に置いて手話で伝える。

『私なんかが恋愛なんてしても困らせてしまうだけだよ』

「なんでなんで?」

『こんな話せない私なんか誰も好きになる人なんているわけないよ』

「どうして、そう決めるの? 誰か小春ちゃんのこと好きって言ってくれる人いるかもしれないよ?」

『話せないことでいっぱい迷惑かけてしまうし、相手にあまり負担かけたくないの』

「そっか……」

少し残念そうな顔をする唯花ちゃんには申し訳ないけど、私が場面緘黙症になってしまった以上、これは仕方ないことだ。

私の気持ちは蓋をしよう。

もうこれ以上、溢れないように。