端っこのテーブルに唯花ちゃんと向かい合わせで座った。
お昼時のピークは過ぎたのかそんなに混んでなくて、3時のおやつにとデザートを食べているお客さんがちらほらいる。
「小春ちゃん、注文決まった?」
唯花ちゃんの問いに頷くと、「じゃあ、ボタン押すね」と唯花ちゃんは店員を呼ぶボタンを押した。
店内に音が流れる。
「俺、行きます」
そんな声が聞こえてきて、思わずドキッとする。
厨房から楓くんが出てきて、私たちのところに来てくれた。
唯花ちゃんは、ミルクティーと季節限定のマスカットがのったパフェを頼んだ。
どうやら、唯花ちゃんは季節限定に目がなく、ついついそれを頼んでしまうらしい。
「小春はどれにする?」
楓くんが聞いてくれて、私はメニューを指差して答える。
「カフェオレが1つ」
楓くんは注文表の紙にメモをとる。
「デザートはどれか決まってる?」
また指差して楓くんに伝える。
「苺のショートケーキが1つ」
私は、唯花ちゃんとは違い、ケーキ屋さんに行ったら定番のものを頼む。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
敬語で話した楓くんに、私はまたドキリとした。
いくら私たちでも、お客さんとして接する楓くん。
胸のドキドキを必死に隠しながら彼に頷いた。
「ありがとうございます。少々お待ち下さい。失礼致します」
楓くんは丁寧に頭を下げて、また厨房へと戻って行った。
きっと、他の店員さんが来たら、緊張のあまり指差して答えることができなかったかもしれない。
楓くんは、話せない私のために配慮してくれたのかな。