国王陛下は帝国との外交を優先するしかない。もしここでオズバーン侯爵の肩を持てば、アトランカ帝国との関係が悪化する。さまざまな取引がある帝国と事を構えるのは得策ではない。

 だが、オズバーン侯爵にとっては切り捨てられたと感じただろう。オズバーン侯爵はなにも言えなくなり、ギリギリと奥歯を噛みしめた。

 カールセン伯爵となり、妃教育を受けてきた今の私だからそう理解できる。

「グラントリー皇太子、続きをお願いします」
「ラティシア・カールセン嬢はかつてコートデール領地において、手足を欠損した領民の治癒にあたっています。認定試験の一環で、困窮した地域を周り領地の復興に貢献したと記録がありました。このことから彼女が月の女神の末裔であることは間違いないと断言できます」
「補足として、僕が毒物を摂取して危篤状態になった際もその治癒魔法で命を助けられている。また、イライザ・アリステル嬢の婚約者ジルベルト・モーガンが、バハムートのブレスを受け瀕死の重傷を負った際も、月の女神の治癒魔法を使い一瞬で完治させた。これは目撃者も多数いる」

 フィル様と出会った時と、イライザ様の恋路を応援した時のことだ。なんだか懐かしく感じる。

 あの時は婚約解消したくて頑張っていた。でも今は、フィル様の婚約者でいたい。これからもずっと、フィル様と一緒にいたい。