「姉上……! 戻ってきてくださったんですね!」
「セシリオ、ごめんなさい。私が手紙を出したばかりに……ツラい思いをさせてしまったわね」
「姉上のせいなどではありません! このような冤罪をかけられるのがおかしいのです」
「ところでお父様の執務室で何をしていたの?」

 チラリと見える室内は書類がひっくり返されて、まるで賊が入ったあとのように荒らされていた。

「あっ、その……父上と母上の無実を証明するようなものがないかと、ずっと探していたんです」
「そう、それなら私も一緒に探すわ。そのために戻ってきたのだから」
「姉上……ありがとうございます……!」

 潤んだ瞳から雫をこぼすまいとセシリオがグッと眉をよせる。不安を隠して最善を尽くす姿はもう立派な貴族だ。大人になった弟の背中に伯爵家の嫡男としての覚悟を感じて、なんとも言えない寂しさが込みあげる。

 昔はあんなにポロポロ泣いて私に縋ってきたのに……でもセシリオの様子なら、安心して伯爵家を任せられるわ。私がいなくなってもきっと大丈夫ね。

 そう思い直してお父様の執務室で作業を進めた。