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「御機嫌よう、カンナ――――様」


 レイラの引き攣った笑顔を目の前に、私は唇を引き結ぶ。


(……毎日わざわざご苦労なこと)


 学園内のクラスは、家柄と学力を考慮して編成されている。私とユージーンは一番上、対するレイラは一番下だ。教室だって遠く離れているし、普通はズカズカと入室なんてできない。
 因みにレイラの学力は下から三番目らしく、お金で入学を買ったと専らの噂だ。


「まあ、酷い。今日もだんまりですの? 折角こうしてお話をしにやってまいりましたのに」


 ユージーンが居ない隙を狙い、レイラはこうしてやって来る。周りから『不敬』と咎められないよう、口調だけは令嬢を気取ることにしたらしい。そんな分別を持ち合わせていたことに、私は寧ろ感心した。


「ねぇ、カンナ様は公爵令嬢でいらっしゃるんでしょう? すっごーーい。羨ましいわぁ。
あんたなんて、親ガチャ失敗すれば良かったのに」


 だけど、話の内容は相変わらず。私を罵倒するためのものだ。