(ホント、思い出さなくて良かったのになぁ)


 完全なる黒歴史――――いや、生まれ変わっているのだから、今の私とは全く関係のない話だ。レイラの方は、そうは思ってないみたいだけど。めんどくさいことこの上ない。

 大体、前世の記憶が戻るだなんて、小説や漫画の中だけの話だと思っていた。しかも、私一人だけじゃなくて、レイラにまで記憶があるなんて最悪。神様は私に対してどこまでもシビアらしい。


(いけない、こんなんじゃまた『悲劇のヒロインぶってる』って言われてしまうわ)


 悲劇のヒロイン――――そんなものを気取るつもりは一切ない。メソメソ泣いたところで、あいつの思う壷だもの。返り討ちにしてやるぐらいの気概を持たなければ。

 そうよ。

 今の私には、前世の分までやり返すだけの力があるんだもの。お望み通り、加害者になってやろうじゃない。


(悪いのはレイラなんだから)


 ユージーンに気づかれぬよう、私は小さく鼻を鳴らした。