『返してくれない?』


 犯人は明白。私だって、やられっぱなしだった訳じゃない。


『一体何のこと?』
『被害妄想が過ぎるんじゃない?』 
『自意識過剰なんだよ』
『悲劇のヒロイン気取り?』


 けれど数の暴力には勝てやしない。
 段々相手をするのが面倒になって、私は何も言い返さなくなった。

 だけど、そしたら今度はそれが面白くなかったらしい。レイラの行為はどんどんエスカレートしていった。

 真冬にバケツ一杯の水を浴びせられ、服をズタズタにされ、インターネットであること無いこと拡散され、私の堪忍袋の緒はついに切れた。


『いい加減にして。私が何をしたって言うの?』


 取り巻き達が居ないタイミングを見計らい、レイラの元に詰め寄る。あくまで冷静に。仲介役を交えた話し合いの場を設けさせるつもりで。


『は!? あんた、自分が被害者だとでも思ってるわけ? ふざけんじゃねぇよ! 自分の胸に手を当てて聞いてみな。マジで、悲劇のヒロインぶんなっつーの!』


 ――――それが、前世で私が耳にした最後の言葉だった。