「本当に、君は救いようが無いね。俺の婚約者が、そんな愚かなことをする筈がないだろう?」


 嫌がらせの数々。こちら側の証拠が十分に揃ったところで、彼女を王城へと呼び寄せる。
 ユージーンに立ち会ってもらい、王太子の婚約者を害したものとして、彼女の処遇を検討する。
 悔しさのあまり、レイラは唇をわなわなと震わせた。


「殿下! あたし……あたしは…………」


 媚びるような表情。けれど、ユージーンは首を横に振る。

 レイラの目論見の一つ――――ユージーンの誘惑は、当然ながら上手くいっていない。
 そもそも、半径五メートル以内に入ることができないし、話し掛けることすら許されていないのだもの。当然の帰結だ。

 前世ではモテていたレイラも、現世ではからっきし。皆『彼女(レイラ)とは関わり合いたくない』といった様子で、距離を置いているのだ。


「――――殿下! 殿下はその女に騙されているのですわ! そんな性悪女、あなたの妃に相応しくありません!」

「……」


 何も言わないまま、ユージーンがゆっくりと振り返る。私の肩を抱き、レイラを冷たく見下ろしながら、ほんのわずかに口角を上げた。