レイラの嫌がらせはとことん幼稚だ。
 小学生低学年レベル。いまどき私物を隠して喜ぶなんて、馬鹿みたいでしょう? だけど、それをやるのがレイラだ。


「――――カンナ様の席で、一体、何をしているのですか?」


 レイラの背中がビクリと跳ねる。
 放課後、誰も居なくなった教室に忍び込み、私の私物を物色するレイラ。絶対に言い逃れが出来ないよう複数人で囲めば、彼女は顔を真っ赤に染めた。


「ちょっと触っているだけでしょ!」


 周囲が俄かに騒めく。


(――――馬鹿なのかしら?)


 レイラに現世の記憶は残っているのかしら? いや、寧ろ、人格を乗っ取られたって言われた方がしっくりくる。
 前世と今とじゃ私たちの身分も、文化も、法律だって、何もかも違っている。自分がどれだけヤバいことをしているのか、自覚していない辺りが恐ろしい。彼女の中では、今でも自分が一番なんだろうけど。


「恐ろしいわ……一体何をしようとしていたのかしら」


 わざとらしく身体を震わせたら、レイラは腹立たし気に眉を吊り上げる。


「この件はお父様や殿下にも報告させていただきますわね」


 扇の下でニヤリと笑う。彼女の望み通り、悪役が板についてきた気がした。