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(この世に地獄なんてもの、存在しないのね)


 もしも地獄があったなら、レイラも少しは真面になっただろう。そう思うと、ついついため息が漏れてしまう。

 レイラは相変わらず姑息だし、陰湿だし、しつこかった。生まれ変わった所で、やることはちっとも変わらない。

 だけど、迎え撃つ側のこちらの状況は全然違う。


「ちょっと! どうしてあたしが責められるの! どうして皆、あたしの話を聞いてくれないの!?」


 学園の至る所で、私の悪口を言って回るレイラ。けれど、彼女の行動は容易に想像できるから、事前に根回しをすることは実に容易い。


「カンナ様に無視されるですって? 当然でしょう。あなたが無礼な振る舞いをしていること、皆が知っておりますわ。わたくしだって、あなたに発言を許して無くてよ」


 レイラが買収できるのは、親が爵位をもたない平民ぐらい。それだって、私の方が先に動いたから、彼女側に付くことは無い。普通は目先の利益より、将来の方が大事だもの。

 それでも、数人はレイラに便乗して私の悪評を流したみたい。
 だけど、生憎と悪口には慣れている。妃の位が脅かされるレベルじゃないなら、それで良い。
 悔しそうに歯噛みをするレイラの姿は、大層見物だった。