『中途半端なのよ、あんた。メソメソと泣くことも出来ない。ヒールになる覚悟もない。『私は辛いことに耐えてるんです』って、そういうのが滲み出てんの。分かる?』


 レイラのあの発言は効いた。確かに私は、自分が完全な加害者にならないよう動いている。だけど、人間なんてそんなもんじゃなかろうか。自己犠牲の精神に溢れた大人しい妃なんて、ユージーンは求めていない筈だもの。


「ユージーンは、私のことだけ気にしていれば良いのです」


 私の言葉にユージーンが小さく目を瞠る。


「あなたの婚約者は私ですもの。決して余所見はさせませんわ」


 色々考えた挙句、そんなことを言ってみる。頬が僅かに熱い。


「カンナの言う通りだ」


 ユージーンはそう言って、穏やかに目を細めた。ビックリするぐらい整った、悪戯っぽい表情。彼のこういう顔に私は弱い。


「君のそういう所、俺は好きだよ」


 額に優しく口づけられ、唇が大きく弧を描いた。