出会って十年。婚約して二年。
 五名の婚約者候補の中から、ユージーンは私を選んでくれた。
 とはいえ、政略結婚であることに変わりはない。強い愛情で結ばれているかと問われれば、答えはどうしても否になる。

 だけど私は、ユージーンのことがとても好きだった。

 王子様って言うと、どうしても品行方正、堅実で誠実な良い人を想像するけど、ユージーンはそんな枠には収まらない。

 天才肌で策略家。必要ならば、後ろ暗いことでも平気でできちゃうタイプ。涼しい顔の内側に熱い情熱を秘めた人。人を惹きつけるカリスマ性は、王子様っていうより革命家って感じ。ただ傅かれるだけじゃなくて、遥かなる高みから人を引っ張り上げるような――――追い掛けたくなるような人。

 彼に認められたい。隣に並び立ちたいなら、ただの良い子でいちゃダメ。この十年間、そう思って生きてきた。

 見た目は上品、嫋やかに。裏では権謀術策を駆使し、彼の矛と盾になれるよう、自分自身を磨いてきた。今更、彼の隣を奪われたくはない。