「驚くだろう? 全く相手にしていないのに、何度も何度も追いすがって来るんだ。しかも、カンナの悪口まで吹き込もうとするんだよ? ここまで来ると、かえって感心してしまうね」


 ユージーンの言う通り。いくら前世の記憶があるとはいえ、やって良いことと悪いことの区別もつかないのだろうか。
 私は唖然としてしまう。
 そんなことを明け透けに口にしているユージーンにも。


「――――もしかしてユージーンは、彼女のことが嫌いなのですか?」

「うん。嫌いだよ。大嫌いだ」


 ユージーンが微笑む。寒気がした。間違いなく本気の『嫌い』。誘惑に負けなくて良かったと思うものの、彼はレイラと出会ったばかり。何となく釈然としない。


「カンナは、俺があの子を気に入った方が良かった?」

「いいえ、そんなことはございません」


 視線が絡む。テーブルの上、手のひらがギュっと握られる。