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「レイラ嬢はすごいね」

「……え?」


 それから数日後。ユージーンの言葉に、私は思わず目を見開く。


(ユージーンったら、もう絆されちゃったの?)


 彼はそんな人じゃない――――そう思っていたからショックが大きい。
 確かにレイラは美人だけど、性根が腐っているじゃない。あんな悪意の塊みたいな人、ユージーンが気に入ると思っていなかった。外面が良いし、処世術に長けているから、妃に丁度良いと思ったんだろうか?
 お茶で潤したばかりの喉が、カラカラに感じられる。呆然とユージーンを見つめれば、彼は首を横に振った。


「ああ、良い意味じゃないよ。悪い意味で言ったんだ」

「……そうですか」


 こっそり胸を撫でおろしつつ、私はユージーンへと向きなおる。


「具体的にはどのようにすごいのでしょう?」

「それがね、彼女は俺を誘惑しようとしているんだ」


 ユージーンはクックッと喉を鳴らした。

 誘惑。これまたド直球だな。
 私は思わず目を見開いた。