とある日の夜20時過ぎ。
テント内のメインステージへ団員に呼ばれて行くと…。

「え、ええええっ、無理無理無理無理ッ!」
「大丈夫ですよ、上に上がってジルさんの世界を見て貰った方がいいと思うので」
「いやいやいやっ、見なくても分かるから大丈夫ですっ!」

何故か、ジルの仲良しメンバーが空中ブランコの吊り梯子を上って、地上13メートルの世界を体験するべきだと。
ジルと付き合っていることはメンバー全員が知っているからなのか、外国人のノリにはついて行けない。
高所恐怖症ではないけれど、さすがに上って見てみて?と言われても…。

足が竦んで上がるどころではないのに、トラピーズのメンバーが下から支えるように押し上げ、無理やり上らされている。

「たっ……高ぁ~いっ」

他の演目の団員達も集まり始め、死刑執行場?みたいな状況になって来た。
眼下にはちゃんと落下防止用のネットがあるんだけど、そこまでの距離も結構ある。
地上4階相当に立たされた私は、緊張のあまりごくりと生唾をのみ込んだ。

すると、急にトラピーズのテーマ曲が流れ出す。
それに合わせるように、その場にいる団員たちが手を叩いてリズムを取り始めた。

そして、その場にいなかったジルが漸くステージ上へと現れた。

「ジル~~っ、助けてぇ~~!無理っ、高くて怖いし、下りるのも怖いって」
「フフッ、ナナ~、大丈夫だよ~~」

何が大丈夫なのか、さっぱり分からない。
半泣き状態で、心臓が飛び出そうなのに。