別のとある日。
地方都市の高校を訪れた一行は、運動部とのガチバトルと称してミニゲームを行う。
メンバーに勝てたら、公演チケットとサイン入りグッズをプレゼントするという景品を提供して。

サーカス団のメンバーは、各方面で活躍して来たトップアスリート達。
現役から離れても、プロとして演技する為に日夜トレーニングは欠かさずしている。
だからこそ、叶う夢の競演。

男子体操部の主将だという学生とジルは、本気の鉄棒勝負をすることになった。
元オリンピック金メダリストのジルの演技を間近で見れるだけでも貴重なのに、彼と勝負出来るとあって体育館にある鉄棒の回りには全校生徒が集まっている。

そんな中で、男子学生が県大会で演技した技を披露すると、団員からも拍手が沸き起こった。
県大会で個人優勝したという彼の演技は、ジルもさすがに驚いている。
基本の動作にキレがあると。
粗削りだから、もう少し技と技の繋ぎ目を丁寧にすることと全体的な姿勢をもっと綺麗に保つことが高得点に繋がるとアドバイスした。

そして、沢山の人が見守る中、準備運動を兼ねた練習を終えたジルは、オリンピックで金メダルを取った時と同じ演技をスタートさせた。

技の入りは勿論のこと、繋ぎ目の大車輪をしている間も足先までピンと張られていて、思わず溜息が漏れる。
G難度のカッシーナ、F難度のマラス、H難度のブレットシュナイダー……。
一つの技だけでも高難易度の技を次から次へと繰り出し、最後だけは特別仕様で。
全校生徒が見守る中、私だけに分かるように目で合図した彼。
私に初めて見せた、あの技。
『ムーンサルト』で、見事に下り立った。

感嘆の大歓声。
引退して6年経つのにノーミスでの演技。
まだ現役で活躍出来そうなほど、彼の演技は観る者を虜にする。