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「皆さん、こんにちは。今日は皆さんに『夢の世界』をお届けする為にやって来ました!」

地方のとある小学校の校庭で、校長先生の隣でマイクを使って挨拶する。

サーカス団を運営する会社に転職した私はこれまでの経験を活かして、サーカスの魅力をもっとアピールする為に多方面に活動の場を見出した。
今日は小学校の児童に『夢の世界』をプレゼントする為に訪れている。

小さい頃からトップアスリートの生の演技を目の当りにしたら、きっと第二のジルのような人が生まれると思って。
ジルが忍者に憧れたように、ジルや他のメンバーに憧れてこの世界に飛び込んでくれる子もいると思うから。

校庭に設置された特設会場で次々と演技をこなす団員。
実際の公演とは違うんだけど、技のキレはいつ見ても素晴らしい。
そんな団員の演技を観て、どこからともなく拍手と感嘆の声が漏れ出し始めた。



小学校以外にも積極的に活動の場を展開し、幼稚園から大学まで。
それから、病院や高齢者施設は勿論のこと、日本屈指の大企業のお祭りに参加したり。
集客目当てで広報活動しているだけじゃない。
運営費を捻出するのも私の仕事。
だから、大企業にスポンサーになって貰うための足掛かりだ。

「こんにちは~!本日は楽しいひとときを共に過ごすことが出来ました。ありがとうございました」

地方の公演で訪れた市町村にある高齢者施設。
そこで演技を終えたメンバーと共にお礼をする。

メンバー達はアフターフォローのように、器具をスタッフが片付けている間にご利用者さんと会話をしたりする。
中でも一番はやっぱりイケメンのジルで、その肉体美と甘いマスクは年齢を問わず人気だ。

92歳の女性を車椅子から軽々と抱きかかえあげると、女性は恥じらいながらも嬉しそうに笑顔になった。