「っ……」

目のやり場に困る。
私を見下ろす彼がTシャツを脱ぎ捨てた、と同時に目の前に現れた割れた腹筋。
それだけじゃない、胸も腕も肩も。
視界に入る全ての場所に見事なまでに綺麗についている、筋肉が。

7年前はこんなにもまじまじと見てなかったと思う。
酔いと恥ずかしさで。

壊れ物を扱うみたいにそっと優しく触れる彼の指先。
もう少し乱暴に扱われても大丈夫なのに…。
それが何だか擽ったくて。
初恋の人を初めて抱く時みたいな緊張感が伝わって来るから。

彼の首に腕を回して、そっと囁く。

「好き」

初めて口にした、彼への気持ち。
ずっと漏れ出さないように押さえつけていたのに。
言わないでいたら、絶対後悔すると思って。

私の言葉が合図だったのか。
彼の愛が降り注ぐ。

何度も角度を変えて啄められ、甘噛みされて。
舌先が絡め取られると同時にTシャツの裾から彼の手が滑り込んで来た。

こういう行為は何度も経験してて知ってるはずなのに。
彼から与えられる全てが、初めてだと体が勘違いしているかのような反応を示す。

僅かに触れるだけで、体がびくっと震えて……。

息つく間も無いほどのキスの雨。
余韻を楽しむ余裕すらないほどに、次から次へと体の隅々まで彼の愛が注がれる。

お酒を飲んでいないのに、だんだんと意識が遠のいてゆく。
彼がさらにその先を求めているから……。

**

「ジル、……ごめん、運転出来そうにない」
「いいよ」
「朝、送るね?」
「フフッ、……ん」

彼のせいで、歩けそうにない。
体に力が入らなくて、起き上がることすら出来ないのだから。

彼の腕の中のぬくもりを噛み締めて、眠りについた。