《悠真side》
我慢強い。一言で表せばそうなると思う。
鈴原秋華、俺の担当する患者さんだ。先輩に聞くと子供の頃からの喘息で、入院はこれで5回目らしい。前回が4年前だから、俺が病院で働き始めたのは2年前、会ったことがなくて当然だった。6歳年下で、大学2年生。何度も入院するのは可哀想だと思ったけど、出会えて良かったとも思う。あでやかな黒髪を下の方で2つに結んでいて、色白で、大きな瞳は不安に揺れていた。はっきりと言う、可愛すぎる。それで俺は不安をどうにか取り除いてあげたくて、あの時はいつもより明るく''普通の患者''に接していた、はずだったのに。
急患が俺の手を離れてからすぐに、あの子の病室に戻った。でも入れなかったのは、大学の後輩であり、なぜか俺と同じ病院で看護師をしている奏斗が彼女と話していたから。彼女の部活を知ったからって、全ては知らない。でも、彼女がみせた驚いた表情を奏斗が最初に見た事に対する怒りなのか、ただ2人の話の邪魔をしたくないのかは分からない。でも入ってしまったら、感情的になりそうで。秋華ちゃんを傷つけてしまうかもしれなくて。入ることが出来ずに、扉の前で立ち尽く