「あの、みんなに頼みたいことがあって」

「ん?何?」



颯汰くんがこちらに近づいてくる。

私はカバンの中から色紙と黒ペンを取り出した。



「結菜に.......あっ、結菜って私の妹なんだけどシャイニングの大ファンでサインが欲しいんだけど.......」



貰えたらきっと家宝になるだろう。

本当なら企画の当選かなにかでないと貰えないような生サイン。

私のお願いで書いてなんかくれるだろうか。

もしかしたら断られるかもしれない。



「どうする?颯汰」

「僕はいいと思うけどなぁ」



きっと勝手に書いてもいいのかという相談だろう。

うーんと悩む颯汰くんに注目が集まる。



「だ、ダメならいいの!こんな抜けがけ他のファンが許さないだろうし」



急いで色紙をしまおうとする私の手を颯汰くんが掴んで止めた。



「……?」

「いいよ。愛華ちゃんは僕らの“特別”だからね」

「えっ?」



驚きのあまり、自分じゃないような声が出た。



「その代わり、僕たちのお願いも聞いてくれる?」



颯汰くんはにっこりと笑って私を見る。

これがとんでもない約束だと知るのは、数日後のこと。