あの日から何度目の3月だろう。
雨の満開夜にはつい期待を持ってあの場所へと向かってしまう。
結局、彼女のこと何も分からないままだった。
名前も、好きなものも、「ぅどん」の意味も。
俺にとって魅力の失ったシンボルをボーッと眺めていると、急に強い風が吹き傘を持っていかれた。
水が嫌いで絶対手放さなかった傘、
でも拾いに行く元気はない。
ふと彼女を思い出し、
雨を浴びるのも悪くない気分になった。

雨粒が目に入り、まぶたに溜まった。
ん?
何かが見えたような気がして
今度は故意に、雫を瞳にコーティングした。
水フィルター越しに見るそれは僕の知らない顔だった。
薄桃色の光の束が四方八方へ爆散し、
これはまるで



そういうことだったのか。

満足気に口ずさむ。

ヒュ~~~~~~~~ゥドンっ

君の見ていた景色、僕にも見えたよ。

【満開の春花火】

君の笑顔の源、僕が守っていくよ。
たとえ季節が千巡ろうとも。
ずっとずっと二人だけの秘密。

雨が上がり、春の欠片が頬を撫でた。

バイバイ。