いつでも真剣、まっすぐさなところが俺のいいところなんだから。
「自分で言ってれば世話ないな」
王河はふーっと盛大なため息をついた。
「で? 具体的にはどうすればいいと思う?」
「そうだなぁ、じゃあ月並みだけど……」
そう前置きをしてから、王河は俺に囁いた。
「っていうのは、どう?」
「王河のその少女趣味的発想はどこから出てくるわけ? もしかして、もう乃愛ちゃんにしたんじゃ……」
「うるせー」
「あーしたんだ。王河、恥ずかし~」
「んなこと言うなら、もう教えてやんねー。あとは自分で考えろ」
ぷんと怒ったように、王河はツンと横を向いた。
あーもう、こなったら王河、頑固だしなぁ。
まぁいいや。
「ありがと、王河。取り合えず今日は帰ることにするわ」
俺はソファから立ち上がって、背中越しにひらひらと手を振った。
「みーくちゃん。みくちゃん、帰ろう~」
昨日あんなことがあったっていうのに、小嶋先輩はなにもなかったような顔で、あたしを教室まで迎えにきた。
あんなことがあったって言っても、あたしがうじうじしているだけだっていうのは、自分でもわかってる。
妃莉先輩のことを本気で好きだったとか、妃莉先輩に初めての片想いをしてたとか、
あとは妃莉先輩とあたしの好きなところが一緒だとか。
おまけに、たくさんの人と付き合っていたとか。
そんなこと今は全然関係ないのかもしれない。
でも、やっぱり気になる。
それは、あたしが自分に自信がないから。
なんで小嶋先輩みたいにモテる人が、
あたしなんかと付き合ってくれているのか、全然理由がわからないから。
だからすねるし、嫉妬するし、自分でもこんな自分は好きじゃない。
それなのに、イヤな態度をとってしまう。
「ごめんなさい、先輩。今日日直なんで帰るのが遅くなります。だから先に帰ってください」
それだけ言うと、くるっと先輩に背を向けた。
そんなあたしの背中に、先輩が声をかけた。
「待ってるよ。何時ぐらいになりそう?」
「えっと……」
そんなことを言われても、初めての日直だからよくわからない。
足音に振り向くと、先輩は教室の中に入ってきたところで、
一番前の席のイスを引き寄せて、そこに座った。
「いつでもいいよ。ここで待たせてもらうから。みくちゃん、急がなくてもいいからね~」
教室の小窓を背に、小首をかしげて、小嶋先輩がひらひらと手を振っている。
「うっ……」
どうしよう、気まずい。
先輩は昨日のこと、本当になんとも思っていないのかな?
先輩はあたしのこと、本当に好きだったりするのかな?
先輩が初恋で初彼のあたしには、よくわからない。
そう思っていると、あたしの隣の席で、今日一緒の日直の三浦くんがあたしに話しかけてきた。
「水野さん、日誌書いて。僕、外を掃除してくるから」
「う、うん」
その声でようやく我に返って、自分の席に向かう。
でも教室の中は女子の黄色い悲鳴で、落ち着いて日誌が書けない。
それはもちろん、小嶋先輩のせい。
小嶋先輩、1年女子にも人気があるんだ。
その前に、あたしっていう彼女がいても、みんな全然気にしないんだ。
前に茉由ちゃんに、『朝陽くんなんかと付き合ったら、嫉妬にかられた女子になにされるかわからないんだよ』って言われたけど、
今のところ、そんなこともまったくないし。