突然、後ろから私に抱きついて来たのは、犬男……コウヤだった。
着る服のないコウヤのために、私が恥を忍んで買って来た服(下着込み)を
公園の公衆トイレで着替えて、戻って来たのだ。
突然抱きつかれた私も驚いたが、目の前にいる純也と百合の方が更に驚いた顔で、
私と、私の背後に現れた男を見つめている。
「ちょ、ちょっと、急に後ろから抱きつかないでよ。
びっくりするじゃない」
「ごめん。つい、嬉しくて。
だって、やっと見つけたんだ。
俺の<運命の女神>……」
そう言って、コウヤは、純也と百合が見ている目の前で、私の頬に口づけした。
「ちょっと、何するのよっ。
恥ずかしいから、そういうことを外でやるのはやめてよね」
私は、コウヤを押しのけると、口づけされた頬を隠すように手を当てた。
元が犬なのだ。
口づけされたというよりも、犬に舐められた、という感覚に近いのかもしれない。
そう自分に言い聞かせるが、コウヤの整った顔立ちを前に、
私は、胸の鼓動が早くなるのを止めることができなかった。
コウヤがにやりと笑みを浮かべる。
「そうか、外じゃなかったら良いんだな」
「なっ……」
「西野、そいつ、誰?」
低く少し怒ったような純也の声で、私は我に返った。
(なんで、あんたが怒ってるのよ)
何故か不機嫌そうな純也の横で、百合は、顔を赤くしてコウヤの方を見ている。
私は、何となく嫌な予感がした。
「えっと、この人は……」
私がどう説明しようかと迷っていると、コウヤが代わりに答えた。
「俺は、ファムの一生の番になる男だ。
お前こそ、俺のファムに何の用だ?」
「何勝手なことを……」
「番って…………そいつには、名前で呼ばせてるんだな」
純也が傷ついたような怒った顔で私を見る。
一体何の事かと思ったが、私が聞き返す前に、百合の黄色い声がそれを遮った。
「きゃー♡
先輩ったら、いつの間に、そんなカッコイイ彼氏作ったんですか?
紹介してくださいよぉ」
百合は、純也に絡ませてた腕を解くと、
コウヤに向かって、はにかんだ様な笑顔を見せる。
「私、先輩と同じ大学の一個下で、水谷百合って言います。
いつも先輩には、恋愛相談とか乗ってもらってて……」
私は、その光景にデジャブを覚えた。
何故なら、純也の時もそうだったからだ。
「先輩が卒業しちゃってからも、よく電話やチャットでお話するんですよ~。
それなのに先輩ったら、あなたのこと、何も話してくれないんです。
水臭いじゃないですか~」
(よく?)
正確には、純也と私が別れてからは、一切連絡はなかった筈だ。
それまでも、時々、電話やチャットを送ってきてはいたが、
どれも、純也に対する自分の気持ちを吐露するものや、
純也が百合にしてくれて嬉しかったことなどを事細かに報告する内容ばかり。
少なくとも私の記憶では、百合が私のことについて訊ねたことなど一度もなかった筈だ。
(もういいから、早く帰りたい……)
着る服のないコウヤのために、私が恥を忍んで買って来た服(下着込み)を
公園の公衆トイレで着替えて、戻って来たのだ。
突然抱きつかれた私も驚いたが、目の前にいる純也と百合の方が更に驚いた顔で、
私と、私の背後に現れた男を見つめている。
「ちょ、ちょっと、急に後ろから抱きつかないでよ。
びっくりするじゃない」
「ごめん。つい、嬉しくて。
だって、やっと見つけたんだ。
俺の<運命の女神>……」
そう言って、コウヤは、純也と百合が見ている目の前で、私の頬に口づけした。
「ちょっと、何するのよっ。
恥ずかしいから、そういうことを外でやるのはやめてよね」
私は、コウヤを押しのけると、口づけされた頬を隠すように手を当てた。
元が犬なのだ。
口づけされたというよりも、犬に舐められた、という感覚に近いのかもしれない。
そう自分に言い聞かせるが、コウヤの整った顔立ちを前に、
私は、胸の鼓動が早くなるのを止めることができなかった。
コウヤがにやりと笑みを浮かべる。
「そうか、外じゃなかったら良いんだな」
「なっ……」
「西野、そいつ、誰?」
低く少し怒ったような純也の声で、私は我に返った。
(なんで、あんたが怒ってるのよ)
何故か不機嫌そうな純也の横で、百合は、顔を赤くしてコウヤの方を見ている。
私は、何となく嫌な予感がした。
「えっと、この人は……」
私がどう説明しようかと迷っていると、コウヤが代わりに答えた。
「俺は、ファムの一生の番になる男だ。
お前こそ、俺のファムに何の用だ?」
「何勝手なことを……」
「番って…………そいつには、名前で呼ばせてるんだな」
純也が傷ついたような怒った顔で私を見る。
一体何の事かと思ったが、私が聞き返す前に、百合の黄色い声がそれを遮った。
「きゃー♡
先輩ったら、いつの間に、そんなカッコイイ彼氏作ったんですか?
紹介してくださいよぉ」
百合は、純也に絡ませてた腕を解くと、
コウヤに向かって、はにかんだ様な笑顔を見せる。
「私、先輩と同じ大学の一個下で、水谷百合って言います。
いつも先輩には、恋愛相談とか乗ってもらってて……」
私は、その光景にデジャブを覚えた。
何故なら、純也の時もそうだったからだ。
「先輩が卒業しちゃってからも、よく電話やチャットでお話するんですよ~。
それなのに先輩ったら、あなたのこと、何も話してくれないんです。
水臭いじゃないですか~」
(よく?)
正確には、純也と私が別れてからは、一切連絡はなかった筈だ。
それまでも、時々、電話やチャットを送ってきてはいたが、
どれも、純也に対する自分の気持ちを吐露するものや、
純也が百合にしてくれて嬉しかったことなどを事細かに報告する内容ばかり。
少なくとも私の記憶では、百合が私のことについて訊ねたことなど一度もなかった筈だ。
(もういいから、早く帰りたい……)