朝、何だか胸元がすーすーするな、と思って目を開けた。
カーテンの隙間から入る陽の光が、見慣れた部屋の中に光の筋を作っている。

「んあっ……」

首筋を何かに舐められて、思わず変な声が出た。
そう言えば、昨夜、犬を拾ったんだ……と思い出した私の視界に、黒と白の髪の毛が映る。

(………ん? 髪の毛??)

「あ、起きた?
 おはよう、俺の運命の女神(ファムファタル)……」

突然、私の視界に見知らぬ(イケメン)が現れた。
そのまま、ごく自然な動作で口付けされる。
男の唇からは、ほんのりカレーの味がした。

「き、きゃあ~~~!!!」

私は、男を思いっきり突き飛ばして叫んだ。
突き飛ばされた男は、ベッドの上で、目を丸くしてこちらを見ている。

しかも、何故か上半身が裸である。

「だ、だだだだ……誰よ、あんた?!」

男は、整った顔立ちで優しく笑みを作ると、自分の胸に手を当てて答えた。

「俺の名は、コウヤ。
 昨夜、あなたに助けてもらった」

「………え? 助けた?」

昨夜、私が助けたのは、確か大きな犬だった筈。
こんな大きな男の人を助けた記憶は、まるで無い。

一瞬、私は、異世界に飛ばされてしまったのだろうかと思った。
でも、今いる場所は、よく見知った私の部屋だ。
異世界ではないとなると、残る可能性は1つ。

「………なんだ、夢か」

ほっとして、下を向いた私の視界に、パジャマのボタンが外され、胸元がはだけているのが見えた。
先程から、胸元がスースーすると思っていた。

「な、な、なななな……」

あまりに気が動転して、なんで、という簡単な言葉すらうまく出てこない。
男は、私の手を取ると、甲に口付けを落として、その整った顔で私を熱っぽく見つめた。

「助けてくれて、本当にありがとう。
 あなたは、俺の運命の女神(ファムファタル)だ。
 この恩は、俺の身体で返す。
 俺の一生をかけて、あなたを愛すると誓うよ」

よく見ると、男は、上半身だけではなく、下半身にも服を着ていない。
見知らぬ男の見てはいけない場所を見てしまい、私は正気を失った。

「いやあああああーーーーー!!!!」