私が訊ねると、百合は、持っていたフォークを置いて、両手を膝の上に乗せた。
何か言いにくい話なのだろうか、と私が固唾を飲んで見守っていると、俯いたまま百合が口を開いた。
「この前会った時にも少し話しましたけど、
私と純也、卒業したら結婚しようって話をしていて……」
(……あれ? そう言えば、この前会った時、純也は、
百合が勝手に言ってるだけだって、言ってなかったっけ?)
「でも、うちの両親が純也のことを気に入っていて、
卒業なんか待たなくていいから、早く籍だけでも入れたらって言うんです」
「はぁ……そうなんだ」
そう言えば、百合の父親は、会社の社長をしていると聞いたことがある。
社長令嬢となれば、本人の結婚について親が口を出すというのは、よくあることなのだろうか。
とりあえず、私は、グラスワインを飲みながら、百合の話を聞くことにした。
「でもでも、私としては、籍だけ入れるなんて嫌で……
やっぱり、純白のウェディングドレスを着て、皆にお祝いしてもらいたいじゃないですか」
それが全女子の夢だとでも言うように百合が目を輝かせて私を見る。
私は、どちらかというと、あまり形に拘らないタイプなので、本人たちが良ければ、別に式など挙げなくても良いのでは、と思ったが、ワインを飲んで誤魔化した。
「でも、私たちまだ学生だし、そんなに派手な式は出来ないだろうって純也が言うから、
私、純也との思い出のあるこのお店で、知り合いだけを集めたウェディングパーティを開けたらなぁと思ってまして!」
(う……まさか……)
私は、百合の”お願い”が何なのか予想がつき、今すぐこの場を逃げ出したくなった。
「それで、先輩にも是非、私たちのウェディングパーティに出席してもらいたいんです!」
百合が両手を組み、真剣な眼差しで私を見る。
「先輩のお陰で、私たち、付き合うことが出来たって言うか……
色々と先輩には、私の恋愛相談に乗ってもらってましたし、
出席してもらえたら嬉しいなあって。
先輩がお仕事でお忙しいとは分かっているんですけど……」
「うっ……えっと、私は……そのぉ…………」
まさか今更、純也と私が付き合ってたという話をするわけにもいかない。
こんなことをお願いしてくるということは、純也もきっと私との関係を百合に話してはいないのだろう。
もし、私がここでその秘密を伝えてしまったら、純也と百合の関係に影響を及ぼすことになるかもしれない。
仕方なく、私は、仕事の都合がつけば、と言い足して、一旦話を受けることにした。
「わぁ~嬉しい♪ ありがとうございます♡
それじゃあ、先輩の住所、教えてもらってもいいですか?
あとで招待状を送りますので♡」
そして、ちょうど私が百合に住所を教えたところで、コウヤが現れた。
店の窓越しに私を見つけて、手を振っている。
私の帰りが遅いので心配して迎えに来たのだろう。
お店の会計を済ませて外に出ると、今思い出したかのように百合が言った。
「そう言えば……先輩って、犬、飼ってます?」
「え、犬? どうして?」
「実は、今サークルの皆で、ワンちゃんの貰い手を探してるんです。
もし、先輩が犬を飼ってなかったら、どうかなって思いまして」
サークル活動の話か、と私は、内心ほっとした。
私もかつては、百合と同じ犬猫の里親を探すサークルに入っていた。
「ううん、今は飼ってないけど、うち、ペット禁止なのよ。ごめんね」
そうですか、と何か意味ありげな笑みを見せて百合が手を振る。
でも、その時の私は、コウヤの相手をするのに手一杯で、百合の思惑に気付くことが出来なかった。
何か言いにくい話なのだろうか、と私が固唾を飲んで見守っていると、俯いたまま百合が口を開いた。
「この前会った時にも少し話しましたけど、
私と純也、卒業したら結婚しようって話をしていて……」
(……あれ? そう言えば、この前会った時、純也は、
百合が勝手に言ってるだけだって、言ってなかったっけ?)
「でも、うちの両親が純也のことを気に入っていて、
卒業なんか待たなくていいから、早く籍だけでも入れたらって言うんです」
「はぁ……そうなんだ」
そう言えば、百合の父親は、会社の社長をしていると聞いたことがある。
社長令嬢となれば、本人の結婚について親が口を出すというのは、よくあることなのだろうか。
とりあえず、私は、グラスワインを飲みながら、百合の話を聞くことにした。
「でもでも、私としては、籍だけ入れるなんて嫌で……
やっぱり、純白のウェディングドレスを着て、皆にお祝いしてもらいたいじゃないですか」
それが全女子の夢だとでも言うように百合が目を輝かせて私を見る。
私は、どちらかというと、あまり形に拘らないタイプなので、本人たちが良ければ、別に式など挙げなくても良いのでは、と思ったが、ワインを飲んで誤魔化した。
「でも、私たちまだ学生だし、そんなに派手な式は出来ないだろうって純也が言うから、
私、純也との思い出のあるこのお店で、知り合いだけを集めたウェディングパーティを開けたらなぁと思ってまして!」
(う……まさか……)
私は、百合の”お願い”が何なのか予想がつき、今すぐこの場を逃げ出したくなった。
「それで、先輩にも是非、私たちのウェディングパーティに出席してもらいたいんです!」
百合が両手を組み、真剣な眼差しで私を見る。
「先輩のお陰で、私たち、付き合うことが出来たって言うか……
色々と先輩には、私の恋愛相談に乗ってもらってましたし、
出席してもらえたら嬉しいなあって。
先輩がお仕事でお忙しいとは分かっているんですけど……」
「うっ……えっと、私は……そのぉ…………」
まさか今更、純也と私が付き合ってたという話をするわけにもいかない。
こんなことをお願いしてくるということは、純也もきっと私との関係を百合に話してはいないのだろう。
もし、私がここでその秘密を伝えてしまったら、純也と百合の関係に影響を及ぼすことになるかもしれない。
仕方なく、私は、仕事の都合がつけば、と言い足して、一旦話を受けることにした。
「わぁ~嬉しい♪ ありがとうございます♡
それじゃあ、先輩の住所、教えてもらってもいいですか?
あとで招待状を送りますので♡」
そして、ちょうど私が百合に住所を教えたところで、コウヤが現れた。
店の窓越しに私を見つけて、手を振っている。
私の帰りが遅いので心配して迎えに来たのだろう。
お店の会計を済ませて外に出ると、今思い出したかのように百合が言った。
「そう言えば……先輩って、犬、飼ってます?」
「え、犬? どうして?」
「実は、今サークルの皆で、ワンちゃんの貰い手を探してるんです。
もし、先輩が犬を飼ってなかったら、どうかなって思いまして」
サークル活動の話か、と私は、内心ほっとした。
私もかつては、百合と同じ犬猫の里親を探すサークルに入っていた。
「ううん、今は飼ってないけど、うち、ペット禁止なのよ。ごめんね」
そうですか、と何か意味ありげな笑みを見せて百合が手を振る。
でも、その時の私は、コウヤの相手をするのに手一杯で、百合の思惑に気付くことが出来なかった。