嵐の前触れは、意外と早くにやってきた。
コウヤと暮らすようになってから、早くも二週間が経とうとしていた。
仕事は、それなりに忙しかったけど、私は、前ほど残業をしないようになっていた。
というのも、私の帰りが遅いと、コウヤが私を迎えに会社までやって来るからだ。
場所を教えていたわけでもないのに、どうやって分かったの、と驚く私に、
コウヤは、恥ずかしげもなく、”ファムの匂いならどこに居ても分かる”と自慢げに胸を張った。
会社の人たちにからかわれるのも嫌なので、それ以来、なるべく早く家へ帰るようにしている。
それに、コウヤが夕食を用意して私の帰りを待っていてくれると思うと、自然と気持ちが家へ向かうのだ。
その日も、早めに仕事を切り上げて会社を出たところで、私のスマホに、百合からメッセージが届いた。
『先輩、この間は、久しぶりに会えて嬉しかったです♡
良かったら、今晩、一緒にご飯食べに行きません?
美味しいイタリアンのお店を見つけたんですよぉ~♪
先輩の彼氏さんの話も聞きたいですし♡
それと……実は、ちょっと先輩にお願いしたいことがありまして……』
私は、なんだか嫌な予感がした。
仕事で遅くなるから難しい、と返信しようとしたら、私の返信を待たずに次のメッセージが届く。
『実は今、先輩の家の近くに来てるんです!
駅で待ってますので、着いたら教えてください~♡』
先手を打たれてしまっては、後に引けない。
仕事だと返せば、駅で待っている百合と鉢合わせをする可能性がある。
多少強引な気はするが、何か困っていることがあるのかもしれない、と思うと無下にも出来ない。
仕方なく私は、了承の意と、駅に到着する時間を百合に返信した。
最寄り駅を出ると、百合が私に向かって手を振っていた。
相変わらず、可愛らしい格好にメイクもバッチリ決まっている。
私は、仕事帰りとは言え、地味目なビジネスカジュアルの服装に、ナチュラルメイクだ。
彼女の隣を並んで歩くことに、何となく気後れを感じてしまう。
そもそも、百合は、私の元彼の彼女なのだ。
気まづくないわけが無い。
しかし、私と純也が付き合っていたことを知らない百合は、そんな私の心中など知る由もない。
当然とは言え、親しみを込めた笑顔を向けられると胸が痛む。
(とにかく、さっさと話を聞いて早く切り上げよう)
今朝、コウヤに帰りはそんなに遅くならない、と伝えているので、あまり遅くなるとコウヤが私を迎えに来てしまう。
私は、何となく百合にコウヤを合わせたくないと思うと同時に、何故そう思うのかが分からなかった。
百合に連れて行かれたお店は、こぢんまりとしたお洒落なイタリアン料理店だった。
既に席を予約してあったようで、店員に案内された席に向かい合って座る。
素敵なお店ね、と私が褒めると、百合は、嬉しそうにはにかむような笑みを見せた。
「前に、純也が連れて来てくれたんです」
(じゃあ、純也と来ればいいじゃない!)
と思ったが、笑顔で聞き流すことにした。
私たちは、メニューを注文すると、食事が運ばれてくるまで当たり障りのない話をした。
純也の怪我がどうなったのか気になっていたが、
百合の目的が分からない以上、不用意に純也の話題を私から振るのは躊躇われた。
しかし、食事が運ばれて来ても、百合は、始終屈託のない笑顔で、大学の噂話や最近ハマっているテレビドラマの話などをして、なかなか核心に触れて来ない。
時間はどんどん過ぎていき、私は、グラスワインの2杯目を半分程飲んだ頃、痺れを切らして自分から話を切り出した。
「で、私にお願いしたいことって……何?」
コウヤと暮らすようになってから、早くも二週間が経とうとしていた。
仕事は、それなりに忙しかったけど、私は、前ほど残業をしないようになっていた。
というのも、私の帰りが遅いと、コウヤが私を迎えに会社までやって来るからだ。
場所を教えていたわけでもないのに、どうやって分かったの、と驚く私に、
コウヤは、恥ずかしげもなく、”ファムの匂いならどこに居ても分かる”と自慢げに胸を張った。
会社の人たちにからかわれるのも嫌なので、それ以来、なるべく早く家へ帰るようにしている。
それに、コウヤが夕食を用意して私の帰りを待っていてくれると思うと、自然と気持ちが家へ向かうのだ。
その日も、早めに仕事を切り上げて会社を出たところで、私のスマホに、百合からメッセージが届いた。
『先輩、この間は、久しぶりに会えて嬉しかったです♡
良かったら、今晩、一緒にご飯食べに行きません?
美味しいイタリアンのお店を見つけたんですよぉ~♪
先輩の彼氏さんの話も聞きたいですし♡
それと……実は、ちょっと先輩にお願いしたいことがありまして……』
私は、なんだか嫌な予感がした。
仕事で遅くなるから難しい、と返信しようとしたら、私の返信を待たずに次のメッセージが届く。
『実は今、先輩の家の近くに来てるんです!
駅で待ってますので、着いたら教えてください~♡』
先手を打たれてしまっては、後に引けない。
仕事だと返せば、駅で待っている百合と鉢合わせをする可能性がある。
多少強引な気はするが、何か困っていることがあるのかもしれない、と思うと無下にも出来ない。
仕方なく私は、了承の意と、駅に到着する時間を百合に返信した。
最寄り駅を出ると、百合が私に向かって手を振っていた。
相変わらず、可愛らしい格好にメイクもバッチリ決まっている。
私は、仕事帰りとは言え、地味目なビジネスカジュアルの服装に、ナチュラルメイクだ。
彼女の隣を並んで歩くことに、何となく気後れを感じてしまう。
そもそも、百合は、私の元彼の彼女なのだ。
気まづくないわけが無い。
しかし、私と純也が付き合っていたことを知らない百合は、そんな私の心中など知る由もない。
当然とは言え、親しみを込めた笑顔を向けられると胸が痛む。
(とにかく、さっさと話を聞いて早く切り上げよう)
今朝、コウヤに帰りはそんなに遅くならない、と伝えているので、あまり遅くなるとコウヤが私を迎えに来てしまう。
私は、何となく百合にコウヤを合わせたくないと思うと同時に、何故そう思うのかが分からなかった。
百合に連れて行かれたお店は、こぢんまりとしたお洒落なイタリアン料理店だった。
既に席を予約してあったようで、店員に案内された席に向かい合って座る。
素敵なお店ね、と私が褒めると、百合は、嬉しそうにはにかむような笑みを見せた。
「前に、純也が連れて来てくれたんです」
(じゃあ、純也と来ればいいじゃない!)
と思ったが、笑顔で聞き流すことにした。
私たちは、メニューを注文すると、食事が運ばれてくるまで当たり障りのない話をした。
純也の怪我がどうなったのか気になっていたが、
百合の目的が分からない以上、不用意に純也の話題を私から振るのは躊躇われた。
しかし、食事が運ばれて来ても、百合は、始終屈託のない笑顔で、大学の噂話や最近ハマっているテレビドラマの話などをして、なかなか核心に触れて来ない。
時間はどんどん過ぎていき、私は、グラスワインの2杯目を半分程飲んだ頃、痺れを切らして自分から話を切り出した。
「で、私にお願いしたいことって……何?」