『先輩って、純也先輩と仲が良いですよね。
もしかして、付き合ってたりとか、するんですか?』
『まさか。純也とは、ただの同期よ』
『本当ですか?! 良かったぁ~。
実は私、純也先輩のことが好きなんです。
でも、純也先輩モテるから……。
先輩、私のこと応援してくれます?』
今更、”NO”と言える筈がない。
私は、いつの間にか、純也と女の子たちの恋のキューピット役に選ばれてしまっていた。
要は、そうやって牽制しておくことで、ライバルを一人でも減らそうという魂胆だ。
でも、私には、どうしても純也と付き合っていることを彼女たちに言う勇気がなかった。
水谷百合も、その内の一人だった。
最初は、私のことを”先輩”と呼んで、慕ってくれる可愛い後輩だと思っていた。
でも、彼女から純也への気持ちを打ち明けられてから、彼女は、毎日のように純也とのことを私に逐一報告してくるようになった。
『今日、純也先輩から”可愛い”って言ってもらえたんです』
『純也先輩にランチをご馳走になっちゃいました~』
『純也先輩が私の頭をなでなでしてくれて……きゃあ~もうどうしようかと思っちゃいました~!』
『実は、今度、純也先輩を思い切って、デートに誘ってみようかと思うんです』
百合からのメッセージを見る度、私の心はすり減って、荒んでいった。
(やっぱり、純也が私なんかを本気で好きになるわけがないのよ。
今まで付き合った女の子とは、毛色の違うタイプで珍しかっただけ……きっとすぐに捨てられる)
サークル活動中、純也と百合が二人一緒に居る姿を見かけるだけで、私は、うまく呼吸ができなくなった。
純也は、私と二人きりの時は優しかったけど、純也の優しさは、私だけに向けられているものではないと、私は知っていた。
百合は、愛嬌もあって可愛くて、屈託なく誰とでも打ち解けられて、私よりも純也に釣り合っているように見えた。
『私、純也先輩にキスされちゃいました』
その百合からのメッセージを見た時、私の心に残っていた僅かな自尊心と期待が音を立てて壊れた。
私は、純也へメッセージを送った。
『ごめん、もう無理。別れよう』
顔を見て伝える勇気はなかった。
私は、純也を徹底的に避けるようになった。
純也は、訳が分からないと言ったふうで、しつこく私に付きまとい、理由を尋ねた。
百合とのことを責めるつもりはなかった。
それが決定打ではあったけれど、そのことがなくても、きっといつかこうなっていたと思うからだ。
『最初から合わなかったのよ、私たち。
私なら、もう何とも思ってないから、純也は、純也の好きにしたらいいよ』
私のことは気にせず、百合と付き合いたいなら、そうしたらいい、という意味で伝えたつもりだった。
でも、その言葉は、純也をひどく怒らせた。
『なんだよそれ…………お前って、そんなひでぇ女だったんだな』
何がそんなに純也を怒らせてしまったのか、私には分からなかった。
ただ、それ以来、純也が私に声を掛けることはなくなった。
私は、就活を理由にサークルを辞めた。
純也と百合のいる空間に、あれ以上居続けることは、耐えられなかった。
それでも、同じ大学の敷地で二人を見掛けることがあると、私は、胸がしめつけられるように痛くなり、動悸がして、息も苦しくなった。
その内、大学へ行くのも億劫になり、単位ぎりぎりでの卒業、就活なんて散々だった。
希望していた就職先のほとんどが内定をとれず、結局、好きでも何でもない職業に就く羽目になった。
私の心は、ズタボロだった。
せめての救いは、純也が就活組ではなく、大学院へ進学したことだ。
私の就職先は、大学とは反対の方角にあったので、純也と顔を合わせることもない。
お互いの住んでいる家は、二駅しか離れていないのに、卒業してから今日まで私たちが顔を合わせることも、連絡を取り合うことすらなかった。
(今更、何を送ってきたんだろう……)
私は、恐る恐る純也からのメッセージを開いた。
もしかして、付き合ってたりとか、するんですか?』
『まさか。純也とは、ただの同期よ』
『本当ですか?! 良かったぁ~。
実は私、純也先輩のことが好きなんです。
でも、純也先輩モテるから……。
先輩、私のこと応援してくれます?』
今更、”NO”と言える筈がない。
私は、いつの間にか、純也と女の子たちの恋のキューピット役に選ばれてしまっていた。
要は、そうやって牽制しておくことで、ライバルを一人でも減らそうという魂胆だ。
でも、私には、どうしても純也と付き合っていることを彼女たちに言う勇気がなかった。
水谷百合も、その内の一人だった。
最初は、私のことを”先輩”と呼んで、慕ってくれる可愛い後輩だと思っていた。
でも、彼女から純也への気持ちを打ち明けられてから、彼女は、毎日のように純也とのことを私に逐一報告してくるようになった。
『今日、純也先輩から”可愛い”って言ってもらえたんです』
『純也先輩にランチをご馳走になっちゃいました~』
『純也先輩が私の頭をなでなでしてくれて……きゃあ~もうどうしようかと思っちゃいました~!』
『実は、今度、純也先輩を思い切って、デートに誘ってみようかと思うんです』
百合からのメッセージを見る度、私の心はすり減って、荒んでいった。
(やっぱり、純也が私なんかを本気で好きになるわけがないのよ。
今まで付き合った女の子とは、毛色の違うタイプで珍しかっただけ……きっとすぐに捨てられる)
サークル活動中、純也と百合が二人一緒に居る姿を見かけるだけで、私は、うまく呼吸ができなくなった。
純也は、私と二人きりの時は優しかったけど、純也の優しさは、私だけに向けられているものではないと、私は知っていた。
百合は、愛嬌もあって可愛くて、屈託なく誰とでも打ち解けられて、私よりも純也に釣り合っているように見えた。
『私、純也先輩にキスされちゃいました』
その百合からのメッセージを見た時、私の心に残っていた僅かな自尊心と期待が音を立てて壊れた。
私は、純也へメッセージを送った。
『ごめん、もう無理。別れよう』
顔を見て伝える勇気はなかった。
私は、純也を徹底的に避けるようになった。
純也は、訳が分からないと言ったふうで、しつこく私に付きまとい、理由を尋ねた。
百合とのことを責めるつもりはなかった。
それが決定打ではあったけれど、そのことがなくても、きっといつかこうなっていたと思うからだ。
『最初から合わなかったのよ、私たち。
私なら、もう何とも思ってないから、純也は、純也の好きにしたらいいよ』
私のことは気にせず、百合と付き合いたいなら、そうしたらいい、という意味で伝えたつもりだった。
でも、その言葉は、純也をひどく怒らせた。
『なんだよそれ…………お前って、そんなひでぇ女だったんだな』
何がそんなに純也を怒らせてしまったのか、私には分からなかった。
ただ、それ以来、純也が私に声を掛けることはなくなった。
私は、就活を理由にサークルを辞めた。
純也と百合のいる空間に、あれ以上居続けることは、耐えられなかった。
それでも、同じ大学の敷地で二人を見掛けることがあると、私は、胸がしめつけられるように痛くなり、動悸がして、息も苦しくなった。
その内、大学へ行くのも億劫になり、単位ぎりぎりでの卒業、就活なんて散々だった。
希望していた就職先のほとんどが内定をとれず、結局、好きでも何でもない職業に就く羽目になった。
私の心は、ズタボロだった。
せめての救いは、純也が就活組ではなく、大学院へ進学したことだ。
私の就職先は、大学とは反対の方角にあったので、純也と顔を合わせることもない。
お互いの住んでいる家は、二駅しか離れていないのに、卒業してから今日まで私たちが顔を合わせることも、連絡を取り合うことすらなかった。
(今更、何を送ってきたんだろう……)
私は、恐る恐る純也からのメッセージを開いた。