ゆいは一度も足を休めることなく
走っていき、
着いた場所は江ノ島で恋人同士が訪れると
有名な『龍恋の鐘』というところだった。

休日はたくさんの恋人たちが
この辺りにいるらしいが、
今日は時間も遅くなってきているからか、
僕ら以外に誰もいない。

ゆいは海の方を黙ったまま見つめている。

僕はそっと近くにいくと、
ゆいが静かに口を開いた。



「海人……。
今日は何の日か、覚えてるかな……?」

「え?今日……?」



僕は何か今日はあったっけ?と考えた。

だけど、思い当たる節はどこにもなく、
首を横に振る。



「今日で、3年目なの。
長かったよ。この3年間は。」



ゆいは、僕らの名前が綴られた南京錠を
手で握りしめたまま、
ゆっくりと言葉を紡ぐ。



「3年前……って、
ゆいが心を閉ざすように
なった頃じゃ……。」



僕は、何かを思いだせる気がして
思考回路を巡らせる。

3年前。
それは僕が17歳の頃のことだろうか。

その頃と言えば……そうだ。

ゆいがどうしてもデートで
鎌倉と江ノ島に行きたいって
言って来たんだっけ?

あれ?でも、僕……。



なんでその時、
行った時のこと、忘れてたんだろう……?