先程来た道を戻り鎌倉駅付近に着くと、
今度は江ノ島電鉄の方へ歩き始めた。

そろそろご飯を食べるかと思いきや、
まだ移動するらしい。

でも、マップを少し覗き見ると
次は『昼食』という文字が書いてあり、
どこで昼食をとるつもりだろうかと気になり
「どこで食べるの?」と聞いたが、
ゆいは言いたくないのか
口を堅く結んだまま江ノ電に乗り込んだ。

江ノ電にはそれなりに人がいて、
僕らは隅の方で立ったまま
外の景色に目をやる。

東京とは違って
ごちゃごちゃした街並みではなく、
落ち着いた雰囲気の街並みのように思える。

ほんの数時間の移動だけで、
これだけ景色が変わるのは
すごいことだよなぁと一人で納得して、
うんうんと頷いた。



「変わらないなぁ。」

「何が?」

「この景色も、この電車も。
すべて色褪せてない。」

「ゆい……?」



急に小さな声で話し始めた
ゆいの顔を見てみると、
嬉しそうな、だけどどことなく悲しそうな
複雑な表情をしていた。

やっぱり、何かおかしい。

僕は今までのゆいの言葉を思いだして、
彼女はこの小さな旅に
何らかの思い出があるのではないかと
推測した。

そして、
その思い出とやらは
嫌でも後で知ることとなる。