「海人、教えて。」

『何?』

「3年前、
海人はここで言いたいことがあるって
言ったよね?

それっていったい何だったの……?」



『あー、
その話しなくちゃならなかったね。』と
苦笑交じりに言うと、
咳払いをしてから真剣な顔つきで
私のことを見据えた。

あまり見た事のない真剣な眼差しに、
思わず息をのむ。



『長谷ゆいさん。』

「は、はい……?」

『僕と、結婚してくれませんか?』

「……へ?」



海人の口から出た言葉は
私が想像していた言葉よりも
斜め上をいっていて、
頭の整理が出来なくなる。

3年前から、
海人はこのことを言うって
決めていたって言うの……?

でも、なんでここ何だろう……?



『なんでここで
言うつもりだったんだろうって
顔してるね。』

「え?だって……。」

『いいよ。今教えるから。
ココで言おうって思ったのはね、
昔ゆいの父さんも僕の父さんも、
ここでプロポーズをしたって
聞いてたからかな?』

「え、そうなの……?」



家族ぐるみの付き合いで
誰よりも互いの事を
知っているつもりでいたけど、
まさか双方の両親が同じ場所で
プロポーズしていたなんて
知りもしなかった。

というか、
両親がここで結婚することを
決意した事すら初めて耳にした。



『僕は変な話、
早くゆいと結婚したいって思ってたんだ。
純粋に。』

「そう、なの……?」

『そう。だから、互いが20歳になって
大人になったとき
ここで言いたいって思った。

最初は江ノ島なんて興味なかったけど、
行くって話を父さんにしたとき
その話を聞いて、
自分もそうしたいって思ったんだ。
……安直でごめん。』



安直だなんて、思わない。

こんなにも、愛おしくて
ずっとそばにいたいって思っていた人に
言われた言葉。

心を落ち着かせれば、
自然と整理が出来る。

答えなんて、とっくに出ている。