「か、いと……?」 



確信は持てなかったけど、
そんな予感がした。

だから、海人の名前を恐る恐る呼ぶ。
すると……。



『僕、だよ。』



耳元で聞こえた声は、
昔から聞き慣れた和田塚海人の声だった。

私は、ゆっくりと振り返ってみると
背後にはあの時のまま、
変わらない姿の海人が立っていて、
優しい笑みを浮かべている。



「海人……!」



自然と体が動き海人に抱き着くと、
しっかり私を支えてくれていた。



『急に抱き着くなって。
びっくりするじゃん。』

「海人だって、急に抱き着いて、
それに急に、いなくなって……。」

『ごめんって。』



少しだけ困ったような表情で
謝ってくる海人。



『そういえば、
ずっとゆいのこと見てたんだよ。
そばにもいたんだよ。』

「え?そばに……?」

『そう。ゆいってば話しかけても
応えてくれないなぁって思ってたら、
ついさっき死んでいた事に気付いたんだ。
馬鹿だよね。3年も経ってるのに。』



ずっと、海人はそばにいてくれた。
それが分かっただけで、心が温かくなる。
私は、
首を横に振ると小さく笑みを浮かべた。



「海人は馬鹿だけど、馬鹿じゃないよ。」

『え、何それ。結構傷つく。』

「馬鹿だけど馬鹿じゃないんだってば!
褒め言葉。」

『そういう風には聞こえないし!』



話のノリも流れも懐かしい。
でも、これから先も
この会話が続くわけない事くらい
分かってる。

だから、今聞けることを聞かないと。

私は自分にそう言い聞かせるなり、
海人の目を見つめて質問をする。