中学時代の様な彼に戻って欲しいと願いつつ、友達に裏切られては私に縋る今の彼を、突き放すこともできなかった。


私だけがNの心のうちまでも知っていて、それでもなおそばにいる。


その"私だけ"に縋りたかった。




優越感に笑顔で浸っていた私は馬鹿だったんだ。


私にもしも、殴ってでも彼を止める優しさがあったのなら。


私にもしも、抱きしめてでも彼を止める強さがあったのなら。


あの涙は流れなかったのだろうか。


この時の彼の行動も私の悩みも、今となっては若気の至りだと一言で片付けられてしまう。


それでも当時の私たちが抱えるには重すぎていた。




Nが更生するきっかけになったのは母親だった。


"母さんが倒れた"


真夜中にNから送られてきたメッセージを、朝になってから見つけた私はすぐに返信をした。


"お母さん大丈夫なの?"


"分かんない。今から来られる?"