何なんだ、こいつのこの自信は…。

偽物の癖に、何でこんなに自信満々なんだ。

「いっ…てぇ…。…ナジュ、大丈夫か?」

鼻血をハンカチで押さえながら、俺はよろよろと起き上がり、顔が溶けているナジュに声をかけた。

シルナも床で悶絶しているが、あっちはまぁ…放っとこう。

「治るから大丈夫ですけど…。あぁ、折角の男前が台無しですよー」

「うげっ…」

ナジュの顔は皮膚がドロドロに溶け、自称イケメンの面影をなくしていた。

人によっては、トラウマになるレベル。

この場に生徒がいなくて良かった。

こんなナジュを見たら、確実に悲鳴をあげるぞ。

ナジュが不死身じゃなかったら、どうなっていたことか。

「ナジュ君に…学院長先生や羽久さんに、こんな酷いことをするなんて…!」

天音は珍しく憤った様子で、杖を握り締めた。

「絶対に許さない…!」

「ふーん?じゃあ、僕を止めてみなよ」

ドッペルゲンガー天音は、にやにやしながら答えた。

さっきから、何なんだこの自信は。

「…solinesh」

天音は得意の光魔法で、ドッペルゲンガー天音に攻撃した。

…が。

ドッペルゲンガー天音は、両手に細身の剣を持ち。

その剣で、天音の光魔法を一刀両断した。

「…!?」

何なんだ?その剣…。

普段の天音は、そんなものは持ってないはず。

両手に剣を構えるドッペルゲンガー天音を見て、本物の天音は絶句していた。

そりゃそうなるだろう。

しかし、ドッペルゲンガー天音は。

「僕は出し惜しみはしないよ…君とは違ってね」

得意げな顔で、そんなことを言った。

出し惜しみ…ってどういう意味だ?

「…くっ…!このドッペルゲンガー、トゥルーフォーム天音さんを再現出来るんですか…!だとしたら、不味いですよ」

溶けた顔で、ナジュがそう言った。

…トゥルーフォーム…?

「あ、あぁぁぁナジュ君!それは黙っ…そのことは…!」

…?

慌ててナジュを止めようとする天音に、首を傾げている暇もなく。

「天音、来るぞ!」

「…!」

容赦なく剣を振り回すドッペルゲンガー天音の攻撃を、天音はかろうじて躱した。