…とはいえ。

この天音は、自分を本物だと自覚してるんだよな?

「ユリナさんを泣かせたことも、全くご存知ないようです。一応、この天音さんが本物であると仮定しても良いのでは?」

「…そうか…。…そうだな…」

それだけで、簡単にオリジナルだと信じるのは危険だか…。

学院の中で、誰よりも天音と親しくしているナジュがこう言うのだから…。

一応、目の前にいるこの天音を、天音だと信じても良いのかもしれない。

100%確信してる訳じゃないけどな。

常に、こいつが偽物である可能性を考慮していなくては。

「あ、あの…?どういうこと?本物って…」

天音(仮)が、戸惑ったような顔で尋ねた。

成程。この表情も、まるで本物のように見えるな。

「お察しの通り…あなたのドッペルゲンガーが出たんですよ」

「えっ…!僕のドッペルゲンガーが出たの…!?」

…うん。

この反応も、やっぱりオリジナルそのものだ。

これがもし偽物だったら、こいつはとんでもない役者だぞ。

「いたいけな女子生徒を泣かせたらしいですよ。最低ですね」

「え、えぇ…!?嘘…そんな…」

「大丈夫です。ちゃんと『天音先生は生理前だから』って言い訳しておきましたから。これで誤解は避けられますよ」

「…ナジュ君、君は何を言ってるの…?」

…俺は悪くないからな。

悪いのはドッペルゲンガー天音だから。うん。

…別の誤解が生まれそうだよな。

「急いでもう一人の天音君を捕まえて、止めないと…。これ以上好き勝手にされたら、生徒にも言い訳が出来なくなっちゃうよ」

「そ、そうですね…。でも…僕のドッペルゲンガーって何処に…」

何処にいるんだろうな。

「天音のフリをするなら、順当に考えて…保健室にいる可能性が高いんじゃないか?」

「あ、そうか…」

「よし、じゃあ今すぐ保健室に行ってみよう」

話はまとまった。

書類仕事をしていた天音は、書きかけの書類を放り出して立ち上がった。

今は、書類仕事どころじゃないからな。

保健室にいれば良いが、いなかったら校内大捜索だ。

それでも見つからなかったら、もうお手上げ…。




…と、思っていたら。