――――――…もう二度と、こんなことをするつもりはなかったんだけど。

そうも言ってられませんからね。

何より、天音さんを痛い目に遭わせてくれた…その報いは受けてもらう。

僕も、左半身ふっ飛ばされてますし。

…形振り構っている場合じゃないでしょう。

さて。

じゃあ、やろうか。

こんなことをすれば、きっと君は怒るだろうけど。

それでも…。

「僕に、力を貸してください…。…リリス」

僕は、自分の中にいる恋人…魔物…の名前を呼んだ。

心臓が、どくん、と脈打つのを感じた。

血液の循環が一気に加速し、鼓動が早くなる。

同時に、意識が混濁してきた。

自分のものであるはずの身体が、自分のものではなくなるような…そんな錯覚を覚えた。

羽久さんが別人格に「入れ替わる」ときも、こんな感じなのだろうか。

かつて、一度だけ経験したあの感覚が、再び蘇ってきた。

もう二度とやらないつもりだった。

もう二度と…やる必要はないはずだった。

何より、僕の大事な恋人は…このような行為を望んではいないだろう。

だからきっと、こんなことをして、後で怒られるんだろうな。

でも今は…他にそうするしかないから。

それで仲間を守れるなら、安いものだろう。